「自宅の一室を営業所にすればいい」——運送業の開業を考えはじめた方が、最初に思いつくことです。
しかしご自宅の場所によっては、それができません。営業所は建物なので、建築基準法の用途制限を受けるからです。そして土地の地目という、もう一つの関門もあります。
この記事では、物件を決める前に確認すべきことを整理します。
営業所を置けない用途地域は?
まず結論です。「住居専用」と名の付く4つの地域が、注意すべき地域です。
| 用途地域 | 営業所 |
|---|---|
| 第一種低層住居専用地域 | ✕ 不可 |
| 第二種低層住居専用地域 | ✕ 不可 |
| 第一種中高層住居専用地域 | ✕ 不可 |
| 第二種中高層住居専用地域 | △ 床面積1,500㎡を超えるもの、または3階以上の建築物は不可 |
| 第一種住居地域 | △ 3,000㎡以下なら可 |
| 第二種住居地域 | ○ 可 |
| 準住居地域 | ○ 可 |
| 近隣商業地域 | ○ 可 |
| 商業地域 | ○ 可 |
| 準工業地域 | ○ 可 |
| 工業地域 | ○ 可 |
| 工業専用地域 | ○ 可 |
覚え方は「住居専用が付いたら要注意」です。そこは住むための場所として守られており、事務所を構えることが想定されていません。
ただし第二種中高層住居専用地域だけは、条件を満たせば置けます。2階建て以下で、床面積が1,500㎡以下であれば問題ありません。運送業の営業所として使う程度の広さなら、まず引っかかりません。
※このほか、田園住居地域も事務所は不可とされています(指定している市町村は多くありません)。判断に迷う場合は、市町村の建築担当窓口にご確認ください。
土地の地目が農地だと、営業所は置けません
用途地域が問題なくても、その土地の登記上の地目が「田」または「畑」だと、営業所を置けません。すでに建物が建っている場所であっても同じです。
課税地目と登記地目は別物です
ここが最も見落とされやすい点です。
| 課税地目 | 固定資産税を課すために、市町村が現況で判断するもの |
| 登記地目 | 法務局の登記記録に記載されているもの |
判断されるのは登記地目です。固定資産税の納税通知書に「雑種地」と書かれていても、登記が「畑」のままなら農地として扱われます。
「税金は雑種地で払っているから大丈夫だろう」——これが通用しません。必ず登記事項証明書(法務局)で確認してください。
農地でも認められる場合があります
ただし、「登記が農地だから即アウト」というわけではありません。次のような場合は認められます。
- すでに農地転用の手続きが済んでいる場合——地目変更の登記が未了でも構いません
- 非農地証明が出るような土地の場合——長年耕作されておらず、農地に戻すことが困難と認められるもの
登記だけを見て諦める必要はありません。実態として農地でなくなっているなら、道は残っています。
転用が必要な場合は、所有者の協力が要ります
農地転用の手続きは、土地の所有者でなければ進められません。借りる場合は、貸主に協力していただく必要があります。
「農地だが転用すれば使える」と分かっても、所有者が「そこまでするなら貸さない」と言えば、そこで終わりです。だからこそ、契約交渉に入る前の確認が大切なのです。
市街化調整区域には置けません
市街化調整区域は、そもそも建物を建てることが原則として認められていない区域です。営業所は建物なので、原則不可となります。
ここで注意していただきたいのは、プレハブやコンテナも「建築物」として扱われるということです。「簡易な小屋を置くだけだから」と考えても、手続きが必要になります。
一方で、屋根のない青空車庫は建築物にあたらないため、市街化調整区域でも基本的に使えます。営業所と車庫では、まったく扱いが違うのです。
→ 姫路・播磨で運送業の車庫に使える土地の探し方|幅員6.5mの壁
用途地域と地目は、どう調べるのですか?
用途地域|市のホームページか、電話で
多くの市町村が、用途地域を色分けした地図をインターネットで公開しています。「姫路市 都市計画図」のように検索すると出てきます。
地図を読むのが苦手な方は、市役所の都市計画担当課に電話して住所を伝えれば、その場で教えてもらえます。
地目|法務局の登記事項証明書で
登記事項証明書を取れば確認できます。法務局の窓口のほか、インターネットでも請求できます。
不動産屋の資料に地目が書かれていることもありますが、課税地目が書かれている場合もあるので、鵜呑みにせず登記で確認してください。
当事務所にご相談ください
候補地の住所を教えていただければ、用途地域も地目も無料でお調べします。営業所として使えるかどうかまで判定します。
自宅を営業所にできますか?
場所によります。
戸建て住宅が整然と並んでいる地域は、第一種低層住居専用地域であることがよくあります。その場合、自宅を営業所にすることはできません。
まずご自宅の用途地域をお調べください。使えないと分かったら、営業所だけ別の場所に借りることになります。車庫から10km以内であれば問題ありませんので、選択肢は思ったより広くあります。
賃貸物件を借りるときの注意点
使用目的が「事務所」になっているか
契約書の使用目的が「居住用」になっていると、営業所として使えません。アパートやマンションの一室を借りる場合、ここが問題になります。
物件を決める前に、「運送業の営業所として使いたい」と貸主に伝え、了承を得ておいてください。後から「聞いていない」となると、契約を解除されることもあります。
契約期間は2年以上か
賃貸借契約書の契約期間は、2年以上であることが原則です。
2年に満たない場合は、契約書に自動更新の記載があれば認められます。逆に、1年契約で自動更新の記載もないものは、認められません。
この条件は、車庫の賃貸借契約にも同じく必要です。
契約者の名義
法人で許可を取るなら、契約者は法人名義である必要があります。社長個人の名義で借りていると、そのままでは使えません。会社設立と物件契約の順番にご注意ください。
広さの決まりはありますか?
明確な面積基準はありません。事務作業ができる広さがあれば足ります。ただし、次のものを置けるだけの余地は必要です。
- 事務机と椅子
- 帳簿類を保管する書庫(点呼記録簿、日報などを保存する義務があります)
- 電話・パソコンなど
実務的には、6畳程度あれば十分という感覚です。広さより、用途地域・地目・契約内容のほうがはるかに重要です。
休憩・睡眠施設も必要です
営業所とセットで、運転者が休憩する場所が必要になります。営業所か車庫に併設します。
| 睡眠を必要とする運行がある場合 | 1人あたり2.5㎡以上の睡眠施設 |
| 日帰り運行のみの場合 | テーブルと椅子のある休憩スペースで可 |
長距離を走る計画がなければ、営業所の中に休憩できる一角があれば足ります。別に部屋を借りる必要はありません。
物件を決める前のチェックリスト
契約書に判を押す前に、この6つをご確認ください。
- 用途地域——「住居専用」が付く地域ではないか
- 登記上の地目——農地(田・畑)ではないか。課税地目ではなく登記で確認
- 市街化調整区域でないか
- 使用目的——契約書が「事務所」になっているか
- 契約期間——2年以上あるか。2年未満なら自動更新の記載があるか
- 車庫との距離——10km以内に収まるか
この6つのうち、1つでも欠けると許可は下りません。そして、どれも契約後には変えられません。
まとめ
- 第一種低層・第二種低層・第一種中高層住居専用地域には営業所を置けません
- 第二種中高層住居専用地域は、1,500㎡超または3階以上なら不可
- 登記上の地目が農地なら不可。課税地目が雑種地でも関係ありません
- ただし農地転用済み(未登記可)や、非農地証明が出る土地なら認められます
- 転用が必要な場合、手続きには土地所有者の協力が要ります
- 市街化調整区域も原則不可。プレハブやコンテナも建築物扱いです
- 一方、屋根のない青空車庫は調整区域でも使えます
- 賃貸は使用目的が「事務所」・契約期間2年以上(2年未満なら自動更新の記載)・法人名義
候補物件の住所を教えていただければ、営業所として使えるかを無料でお調べします。
用途地域、登記上の地目、市街化区域かどうか、車庫との距離——契約前に判定します。農地であっても、転用や非農地証明で使える見込みがあるかどうかまで見ます。
姫路市を中心に、兵庫県全域で対応しています。ご相談は無料。着手金をいただくのは、許可の見込みが立ってからです。
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